3月28・29日の2日間、埼玉県の神川町で強化選手の春季合宿を行ってきました。
兼ねてから道場の達成課題にしていたアウトドア合宿です。
初日朝6時。道場前に集合。
選手の意識レベルは低く、3割くらいは寝ている状態です。それでも車に乗り込むと、さっそくお菓子を食べ始め、賑やかに。
お菓子タイムを終了させた途端に言葉数が激減。
寝たり酔ったりしながら2時間ほどの移動となりました。
途中に寄ったSAで選手達はTVに釘付け。
これって、そんなに面白いものなのでしょうか…。
宿泊場所となる、ひげっちキャンプ場に到着。寝床となるテント設営から始めました。
テント設営は、刺す、叩く、張る、通す、など基本的な身体操作を必要とします。
一見、空手とは無関係なことのようにも思えますが初めて経験する様々な動きが運動の基礎を作ります。
また、普段当たり前に存在する布団やベッド、食事などを全て自分たちの手で準備することは、選手の自立心に役立ちます。
テント設営、寝具を準備し、薪を集め、調理、食事、片付けを済ませて、やっと午後から道衣を着ます。
稽古場所は地元小学校体育館をお借りしました。
卒業式&入学式シーズンのため、体育館内は一面に紅白幕が張られていて大変賑やかな環境でした。
神泉小学校。式の準備からきっと全校生徒数十人だということが予測できます。
と同時に、学校全体が子ども達の事を優しく想うその気持ちが強烈に伝わってきました。
きっと素晴らしい小学校なのでしょうね。
もうこれ以上の汗は出ない!!という程の運動の後は温泉へ。
手ぬぐいで石鹸を泡立たせることに苦戦していました。
公共湯のルールも少し覚えてもらいました。
少し不思議だったのは、体を洗うのも頭を洗うのも彼らが立って行うこと。
なるほど、普段はそうやっているのねと。
夕飯は、疲れて戻ってきたらポンと出て来るなんてものではありません。キャンプ地に戻ってくると早々に火付けから始めます。同時進行で干していたシュラフや毛布を取り込んでテント内に。
作った夕飯は
・鶏肉と大根の煮込み
・豚肉ブロックの豪快燻製
・飯盒炊飯
ユラユラと近寄ってくる煙と格闘しながらの調理経験が、ガスコンロの火と薪の炎の違いを感じられるきっかけになってくれればと思います。
1日の締めくくりは、視聴覚学習の時間。
前日の一夜で素材集めから編集まで行った映像教材を使用して1時間の組手学習です。
全国トップレベルの選手達の技を観て『かっこいい』と感じたものを自分の組手に取り入れてみよう!という目的と共に、強化クラスがどのレベルを目標にしているのか具体的な例を観て感じてもらうための時間でした。
自分でビデオを作っておきながら、翌日の稽古で彼らの組手に変化が現れたことには正直かなり驚きました。
この時のために道場で購入したプロジェクターが活躍。買って良かった…。
この稽古方法はよその道場でも流行るかもしれません。とはいえ、ある程度映像編集の知識が必要でしょうから、そこは指導者の苦労するべきところかと。選手に色々課せるからには…と自分のお尻を叩いております(笑)
ほんの一部分ですが、ビデオを張り付けておきます。David Eric Grohlにリスペクトを込めてFoo Fightersの音にのせて。
長い期間は公開できないと思います。
2日目朝。
6時半に起床。早々にシュラフと毛布を干しに行きます。お昼前には取りこまなくては…。
同時進行で朝食&お昼のお弁当作り。手作り釜戸での調理もこれで最後です。
この頃になると選手達から
『もう一泊したい!』という声がでてきました。
この時点で今回の合宿は成功です。あれだけキツイ稽古と面倒な作業をこなしつつ、まだこの経験を終わらせたくないと言うのですから…。
朝食は
・ジャガイモと牛乳のスープ
・蒸し肉まん
肉まんの蒸し器。これどうなっているかわかりますか??なんの道具も持っていかなかったので、そこにあるものを工夫してやってみました。答えはキャンプ場紹介の動画の中に。
トーストはランチ用です。
あたりまえですが、食器や調理器具も自分たちできっちり洗ってもらいました。冷たい川水で(笑)
経験が少ないようで、これも結構苦戦していました。
テントを畳んだり、シュラフを整理したり、釜戸を解体したりの撤収作業には、それなりの時間を要することになりましたがそれでも最後まできっちり働いて最後に少し遊びの時間を確保しました。
ちなみに大人二名は完全に消衰の様子…。
遊びは懐かしの『引っ張り相撲』縄バージョンです。
拳の握りに必要な握力や調整力を要する遊びで、姿勢が重要だということや相手との駆け引きが勝敗を決めることを遊びの中で学習します。
小一時間の遊び時間を終え、キャンプ場を出た後に向かったのは『矢納フィッシングセンター』。
事前に営業日を役場に確認しておいたのですが、行ってみると閉まってました。
『矢納フィッシングセンター』何度電話してもつながらなかったので、企画の段階で既に不安だったのでした。
しかし役場にまで確認したので大丈夫だろうと…。
ここで魚を釣ってランチで食べようと思っていたのですが、残念でした。
車酔いもあって一時的に選手のテンションが下がりましたが、そんなのは一瞬。
小学校でトーストを食べたら稽古時間にはすっかり元気でした。
これまた一部ですが、稽古の様子をビデオに撮っておりますのでアップしておきます。
最終稽古は足元がふらふらになるまでの組手形式でした。
最後の方はすっかり疲れている様子です。
田村選手は後半から力加減半分で形稽古。
つま先体重を修正する意識をつけました。
帰りがけ、人口湖(ダム)である神流湖の壁の上からの景色を望んできました。
ここが国内屈指の心霊スポットであることを知ったのは、たった今です…。
さて、今回の合宿は、道衣を着ていない時間も常に稽古をすることが目標でした。
そもそも空手道というのは、武道性においては心の持ちようであり、スポーツ性においては一種の身体操作であると私は捉えています。
人間は走る前に歩きますし、歩く前に立ちますし、立つ前にはハイハイです。順を追って成長していくわけですから、空手道の動きにおいても重要なのは身体操作の基本です。もっとも遡って考えるならば前庭感覚や固有受容覚を磨くことと言えます。それらはやはり、空手道の基本的な動きで身に着けるより、もっと日常的な時間や空間の中で行われるのが良いと思います。こどもの場合それらの多くは野外活動を通じて自然と体得していきます。
例えば、摘まむこと、拾うこと、放ること、しゃがむこと、掴むこと、いわば当たりまえの身体操作が全ての運動の基礎となるわけです。走って行っては何かによじ登ってジャンプする、縁石の上を歩いてバランスをとる、その瞬間が自分の身体について学んだり、周囲の環境を自分のものにして運動能力の基礎を形成するのに役立っているというわけです。
ですから、全てのスポーツの基礎は野外活動(アウトドア)にあるということで、空手道競技も例外ではないのです。
そういう意味で今回の合宿は内容が濃く、質の高い内容であったと思います。
企画として反省すべき点はいくつかありますので、これを次回に繋げて更に選手の成長をサポートできる道場になっていきたいと思うところです。
最後となりましたが、お世話になった神川町の皆様(とくに神泉小学校の教頭先生)、ひっげちキャンプ場、父兄の皆様、スタッフとして参加してくれた佐藤さん西村さん、ありがとうございました。
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