空手オリンピックへ向けて~フルコンタクトと伝統派~まとめ

『空手』『空手道』『KARATE』

呼び名は様々。

 

色んな空手がありまして、色んな道を歩む人がいるわけですが、目指すべく山の巓は、きっと同じなんだと信じたいのです。

 

それはきっと空手に限らず、剣道であっても、柔道であっても、合気道であっても、昇っている山はきっと同じなのだと。

 つい先日、当ブログに新極真の緑先生の事をちょろっと書きました。

伝統派とフルコンタクトが協力関係を持ち、一つの目的を目指せるのであれば、それはとてつもない力になり得ると思います。しかしこれ、現実問題どこまで双方が歩み寄れるのでしょうか…。

 

空手家なら誰もが一度は興味を持つことなのに意外と議論されない(タブー視?)この議題を私なりに少し考えてみたいと思います。できる限り完結にまとめたいとは思っていますが、きっと長文になってしまいます。ご勘弁を。

    空手は世界人口4000万人ともいわれる武道性を兼ね備えたチャンピオンスポーツです。また、伝統派だけで考えても180以上もの加盟国で形成されている世界空手連盟は、IOCの国際競技団体に承認された伝統ある公式な組織です。つまり、オリンピックの正式種目として求められる組織性資質について、既に ある一定程度を兼ね備えていると考えられます。国内規模で考えても、内閣総理大臣杯や文部科学大臣杯などが授与され、高校総体やインカレ、国体の種目として認めらているのは伝統派空手道です。

 

 一般的に空手と言えば板や瓦を割ったり、バットを折ったりするパフォーマンス的な『試割り』のイメージを持たれる事が多いわけですが、普段からこういった事をしているわけではありません。特に伝統派空手道では皆無に等しいと言えます。では、なぜそういったイメージを持たれるようになったのでしょうか。恐らくこれは、70年代に一世風靡したマンガ『空手バカ一代』の影響が大きいものと思われます。

 『空手バカ一代』は、原作を梶原一騎、画をつのだじろう ・ 影丸譲也による大山倍達先生と彼が創始した極真空手を題材とした有名すぎる空手マンガです。今の子ども達は知らなくとも、その親御さん方なら一度は聞いたことがあるはずです。

 

このマンガをきっかけに、極真空手と大山先生の名前は国内に大きく知れ渡り、パフォーマンスや試練的に行われる試割りのシーンがテレビや雑誌で多く取り上げられたのでした。

 

 

  1964年に設立された極真会館は、30年後の1994年に開祖である大山先生が亡くなられると本格的な分派・分裂が始まるわけですが、(大山先生の存命中から除名・脱退処分などはありました)緑先生の新極真や葦原会館、極真館など様々な会派に分かれながらも『フルコンタクト空手』という一つのジャンルを国内外に深く浸透させていくのでした。近年では、K-1グランプリを初めとする格闘大会に多くのフルコンタクト選手が輩出されていますし、一般的に空手と聞くとフルコンタクトの姿をイメージされるのはこの為でしょう。

船越儀珍
船越儀珍

 では、この間、伝統派空手道はどんな時代を迎えていたのでしょうか。

そもそも、伝統派空手道の発祥は沖縄とされており、もともと沖縄に在った『手(てぃ)』に中国拳法が合わさり『唐手』となったものと言われています。

 

明治38年、糸州安恒(いとすあんこう)先生によって唐手が学校体育で取り入れられ、大正に入る頃になると松濤館流の開祖である船越儀珍(ふなごしぎちん)先生や日本伝流兵法本部拳法の開祖、本部朝基(もとぶちょうき)先生が本土で唐手の演武を行うようになり、唐手の名前が知られるようになってきました。その後、慶應義塾大学唐手研究会(初代会長、船越儀珍)が『空』の字を使うようになり、『唐手』表記が広がっていったとされています。

 

そもそも唐手の元とされる 『手』 とは、何か特定の武術を指すものではなく、闘技に関する『とある一つの手法・方法』という意味を持ちます。このことから、唐手が本土に伝わってくるずっと以前から、いくつもの『手』が存在したことが想像できます。そんな発祥特性を持った唐手ですから、現在多くの流派や会派が混在するのも不思議ではありません。

 

 1964年10月1日、「日本の空手道に統一的な秩序をもたらす」ことを目的として伝統派空手の四大流派(剛柔流、糸東流、松濤館流、和道流)、旧・全日本空手道連盟である錬武会、諸派の連合である連合会などによって全日本空手道連盟(以後JKFと記載)が設立されました。(極真会館が設立された同年というところが面白いなと…)1967年、大濱信泉に代わって笹川良一氏がJKF会長に就任。その数年後に内閣府から認可が下りて財団法人化。72年に日体協加盟、81年には国体正式種目となりました。

 

 メディアを駆使しながら会員数を確実に増やしていったフルコンタクト系空手とは相反するように、伝統派は地味な地盤固めをしてきた印象があります。フルコンタクトと伝統派では、普及活動に於いても『手』が違っていたという事でしょうか。

 

 

 

 

そんな両者が、ここへ来て一つの目標に向けて動いています。

 

 

 

『空手、五輪種目へ…』

2020年五輪の開催国として日本が選ばれたのは2013年の夏でした。私自身、入院していた東大病院のベッドの上で東京五輪決定の瞬間を生放送で観ていたことがとても印象に残っています。その後IOC会長に就任したトーマス・バッハ氏が開催国の意向を汲んだ新種目採用に積極的な発言をしたことで野球・ソフトボール、そして空手が候補に挙がったのです。


野球・ソフトは資金面で空手を圧倒するわけですが、08年に実施競技から除外されたばかり。対して空手は、お世辞にも『お金持ち』とは言えません。ただ、世界人口は野球に負けていませんし、ヨーロッパでの普及は近年めまぐるしいものがあり、普及レベルで考えるなら 野球<空手 というのが通説です。IOC総会に出席した潘基分(パンギムン)国連総長の影響も無視できない(テコンドーのある韓国としては、空手の実施競技化は決して嬉しくない)ものですが、諸々の条件を鑑みて空手が今回の東京五輪から正式種目される可能性は高いと考えています。なにより、フルコンタクト系空手の方々も五輪採用に向けて活動すると明言されたことで、伝統派とフルコンタクト系が同一の目的をもって協力関係を持てるようになれば、非常に強い力になるのだと思ったのでした。

 

とにかく、多くの関係者がこの一件を千載一遇のチャンスと捉えて実施競技化に向けて本格的に動き出したのです。

当の私も空手の五輪実施競技実現に向けた署名活動に勤しんでいるわけですが、(ご協力いただいた皆様、感謝です)この署名活動でちょっとした課題を見つけることになったのです…。


  『フルコンタクト系の方々も五輪採用に向けて署名活動を始めたらしい』

 

そんな話しを聞いた当初、私はてっきり同じ用紙を使用しているものと思っていました。ですから、大同団結もあり得るなと僅かながら期待をしていたわけです。しかし実際にフルコンタクト系の友人(フルコンタクト道場の館長)の元に送られてきた署名用紙を観せて頂いて、その違いに驚きました。

 

署名用紙ですから、大まかなフォーマットは同じになって当然です。大事なのは、なにを主張するかです。

 

伝統派は

空手道の2020年東京オリンピック正式種目採用を希望します』 

フルコンタクト系は

空手道(2ルール)の2020年東京五輪正式種目採用を希望します』

 

となっており、この違いの深部を読むと、およそ団結とは言えないものが見えてきます。

用紙を提供してくれた友人の話しですと

 

『フルコンタクト系は、空手を五輪種目にしたくて署名活動をしているんじゃなくて、空手には二種類ある事を主張したくて署名活動をしているんだ。それに、伝統派が五輪種目になると人気を持っていかれるから嫌なんだ。正直、俺はどうでも良い。』 

 

とのこと。

 

 

 

あっけらかんと自分の所属している組織上層部の活動について『どうでも良い』と言うところが彼らしい…。

彼は学生時代から自己実現の為に上を利用するタイプでした。自分の道だけをしっかり見て、他者と自分を比較しない人でしたから、そんな彼からすれば『五輪がどうとかどうでも良い。俺は俺のしたいように俺がやる』ということなのだと思います。

 

 

 

 

話しが少しそれました…。戻します。

 

2ルール採用ということですが、正直ちょっと難しいと思います。

 

フルコンタクトの方々が例に出されているレスリングの『グレコローマンスタイル』と『フリースタイル』ですが、これは、ルールが2種類あるというより競技が違うと考える方が自然です。これを空手に当てはめるなら『組手競技』と『形競技』ではないでしょうか。これを無視して複数のルールを採用するというのはキリがありません…。

形競技○○ルールスタイル、

形競技●×ルールスタイル、

形競技××ルールスタイル、

組手競技●●スタイル、、、、、、、、もう収集がつかなくなります。

 

 

 















世にある『空手』の名の付く武道・競技を私なりに大別すると -伝統派、古流、フルコンタクト- の三種となります。

 

 私 は、伝統派だけが空手であるとはまったく思っていません。しかしながら、五輪種目を明確な目標とするならば、この三種がそれぞれのルールを主張するのは賢 明ではないと言わざるを得ません。レスリング種目の除外問題からもわかるように、五輪種目として求められる要素の一つとして、『分かりやすさと統一性』が 挙げられるからです。

この条件をかなえるためにもルール統一は必須です。他の競技を観てもサッカーやバスケットボールに二種のルールはありません。

 

では、いったい何を基準にルールを決めるのか?

考え方は色々ありますが、もっともセオリーなのは、『現時点でもっとも世界に普及しているルールを採用する』 だと思います。

 

それが伝統派のWKFルール。(異論、受け付けますm_ _m)

 

また、現時点でIOC公認の空手団体はWKF一つです。これは、WKFやJKF(全日本空手道連盟)が長年をかけて五輪を目指したルール改正を行ってきた証しでもあるわけです。地道に地道に、メディアに取り上げられることも無く、地味に地味に公式性を持った競技団体として成長してきたのです。だからこそ伝統派は、高校総体の正式種目であり、国体種目であり、内閣総理大臣杯や文部科学大臣杯が授与されるのです。

ですから、空手の五輪種目化が実現されるのであればWKFルールが採用されるのが順当と言えるでしょう。

 しかしこれは、決して伝統派以外を排除しようというわけではありません。

 

事実、五輪実施競技化へ向けてWKFはこんな提案をしています。

 

『一つのルールに則って競技に参加するのであれば、他競技の選手さえも受け付ける』

 

伝統派に所属する選手に限らず、フルコンタクト系の空手を頑張っている人も参加OK。

もっと言えば、柔道家や少林寺拳法、キックボクサー、野球選手だって参加できるのです。

決して誰かを排除するのではなく、より開かれた環境下で多くの武道家やスポーツマンに可能性を残すため、また、それをまとめるためにも共通のルールで競技する事が必要ということです。これであれば、フルコンタクト系も伝統派も関係なく、稽古に励む多くの選手に夢を与える大変画期的な提案だと思いますし、別々の道を行けど、一つの頂点を目指すことができるのではないでしょうか。私は、この方法しかない(少なくとも今は…)と思います。

 

 

11月25日、伝統派の署名活動は締切りを迎えました。間もなく集計結果がでることと思われます。

JFKO(全日本フルコンタクト空手道連盟)も伝統派と同日を締切りに設定されていましたので、こちらも時期公開されることと思います。どんな結果が出ようとも、『こちらの方が多く集まった!』などという無用な背比べをせず、互いに今後協力していける方策を練る段階に進んでいけたらと願うところです。

 

 

 

今からちょうど50年前、極真会館と全日本空手道連盟が設立されたその時から、今日に至るまでフルコンタクトと伝統派は各々別の道を歩んできました。私は、それぞれの道が誤ったものでは無かったと思いますし、正解だったかどうかは、これからの未来が評価することです。

 

融合の時は来るのか…。

協力の時は来るのか…。

 

未来の事は誰にも分らないわけですが、今回の五輪実施競技化を一つの期に、これまでの半世紀とは違う関係を築いていけたら…。

 

2014年の師走の時、私はそんなふうに思うのです。

 

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